2006年10月24日

[レビュー]ロストマジック サウンドトラック(後編)

というわけで、「ロストマジック」のサントラのレビューの続きです。
昨日は総論というにもあまりに漠然とした抽象的な話になってしまいましたので、今日は少し具体的なところにも突っ込みを入れていきたいと思います。

曲名について細かく見ていきたいところがあるので、まずは全曲リストから。

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1. 風のように走れ -Step! Step! Step!-(タイトルデモ)
2. 風のように走れ -Step! Step! Step!- Long Ver.
3. 風のように走れ -feel Fresh-(風車ヶ原)
4. 息吹の中を往く -feel Malachite-(木漏れ日の森)
5. 眩き旅路 -feel Turmeric-(金色砂丘)
6. 育む流れ -feel Indigo-(銀嶺渓谷)
7. ガイアの傷口 -feel Scarlet-(業火の湖)
8. 隠された明日 -feel Charcoal-(滅びの聖都)
9. 天使の仮面 -feel Air-(天穹の神殿)
10. 見出すべきもの -rainbow Chaser-(ねじれた杖の城)
11. 魔、砕け散る処 -battle Field-(バトル)
12. 黄昏の歌姫 -Lost Magic-(ラストバトル)
13. 勝利
14. 敗北
15. クエストクリア
16. ルーンの導き -the Balance-(マップ)
17. 手繰る糸(会話)
18. 勇気を乗せて(勇壮)
19. パラケルスス(笑い)
20. 消せない記憶(悲しみ)
21. 恐れとの対峙(恐怖)
22. 災厄再び(ラスボスデモ)
23. 異邦人の手紙 -WiFi Communication-(未使用曲)
24. 風のように走れ -feel Fresh ,ever Green-(エンディング)
25. ゲームオーバー
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これらの曲名を見るだけでも様々なイメージが湧いてくるところに、なかやまらいでんさんのセンスが光っています。

さて、ここでちょっと気になるのが "feel 〜" という副題がついている一連の曲。そのうち、#3〜#9までの7曲は、曲調などからしてどうやらゲームに登場する7つの属性を象徴した曲らしいのです。おそらく、順に「風、地、光、水、火、闇、天秤」となっているとだと思われます。ロストマジックの攻略サイトなどを見ると、これらの場所と属性の関係は違う部分があるようなのですが(金色砂漠→地、など)この辺はなかやまさんの独自のイメージ解釈なのでしょう。そしてそれぞれに "Malachite" "Turmeric" "Indogo" 等々といった色に関係する単語がついていて("Fresh" と "Air" はちょっとわからないのですが)、それら7色を極めた者がたどりつくところに虹="rainbow Chaser"という曲がある……というのがなかやまさんのロストマジックに対する世界観らしいのです。何ともユニークではありませんか。

こうした独自の世界観で音楽を紡ぐというアプローチは、その世界観を充分に表現しきれるだけの技量があって初めて成立することです。そして、ロストマジックの音楽はそれを見事に果たしていると私は感じました。その世界観によって、画面の見た目のイメージにすり寄りがちな昨今の“ひ弱な”ゲームミュージックには真似のできない、独立した芯の強さが生まれているのです。これだけの聴き応えがある作品は、本当に久しぶりです。

ところで、もうひとつ曲名と音楽から読めるアプローチとして、「風」というキーワードがあります。曲名リストをみてわかるとおり、タイトルデモとエンディングの曲に「風のように走れ」という同じ曲名がついているのですが、サントラ全体を聴いていると、リコーダーやケーナなどの管楽器系の音色がポイントとして多く使われていることにも気がつきます。これらの楽器の音色から連想されるのは空気の流れ、すなわち「風」です。これらのことから合わせて考えるに、おそらくなかやまさんの中にあるロストマジックの世界では「風」が重要なファクターとなっているのでしょう。そういったイメージを描きながらこのサントラを聴き直すと、またひとつ音楽に深みが感じられるのです。

……とまあ、のっけから楽曲自体とは離れたことばかり書きましたけどね。
これだけのメッセージ性にあふれた作品は、ほんっっとうに久しぶりなんですよ。私はもう、うれしくてしかたがないんですよ。曲のタイトルだけでもここまで語らせてくれるなんて、最近滅多にないですからね。もちろん、ただの言葉遊びではなくて、それを支えるだけの曲のイメージがしっかりしているからこそ、ここまで語れるんです。ああ、書いててほんとにうれしいったら、もう!

――閑話休題――

ええと、少し暴走を止めまして(笑)、ここからは楽曲の雰囲気とかについてもお話してみたいと思います。

緩急はありますが、メリハリのついたリズムが特徴的です。暗かったり湿ってたり歪んでたりといった印象は全く無く、素直でまっすぐに前に進むようなイメージで安心して聴くことができます。そう、あたかも(ロストマジックの主人公アイザックのような)少年が野を歩み駆けていくような、そんなイメージです。

音楽としては……どう表現したらいいんでしょう。少なくとも、何か他のジャンルに似ているとか、そういう比較をすることはできません。強いてジャンルを言うとしたら「ゲームミュージック」としか言えない、そういう種類の音楽です。
ファンタジーRPGらしく幻想的な響きもある一方で、PSGやFM音源を思わせる音色が巧みに組み合わされ渾然となっていることで、「ゲームの中のファンタジー世界」とでも言うべき雰囲気を醸し出しています。まさにゲームのための音楽だと言えるでしょう。

特筆すべきは、先にも挙げた7つの "feel" と "rainbow Chaser" の曲。各ステージに込めたイメージが曲調にはっきりと示されている上に、何よりそのメロディの構成力が素晴らしい。1ループの中でイントロ、序盤、中盤、終盤という組み立てがしっかりしていて、特に終盤のテンションの引っ張り方盛り上げ方は何度聴いても唸るほどです。1分半〜2分程度の長いメロディ構成の中で確実に流れを作って山場を盛り上げて綺麗にループへと繋ぐという計算ずくの展開は、短いキャッチーなフレーズの数珠つなぎで終わらせてしまう最近ありがちなゲームミュージックと比べものにならない聴き応えがあります。

#18〜#21の各曲は場面のイメージがそのままテーマになっていますが、あまり大げさな表現にならずに、全体的なバランスの中で微妙に感情の強弱をつけてあるところがポイントが高いです。とかく感情が大げさになりがちな最近の(以下略)。

ひとつ面白いのが、#23のWiFi通信用に作られたらしい未使用曲。「通信」というイメージを強調しているのか、この曲だけパキパキのテクノなんです。全体のイメージからしたら多少浮いた感じの印象なので、それ故に使われなかったのだろうか、とも思ってしまいます。

このサントラで唯一気になる点があるとすれば、収録された曲順くらいなものでしょう。前半の「7色+虹」の曲群はどうしても1セットにせざるを得ないとしても、前半部分にボリュームが偏りすぎていないでしょうか。何より、ラスボス戦の曲がアルバムのど真ん中にきてしまったら、ストーリー展開的にそれ以降の曲を聴くテンションがどうしても下がってしまいます。せめて#22のラスボスデモの曲の後にするとかできなかったんでしょうか。ちょっとその辺だけが気になりました。

最後に、このサントラをまだ購入していない方に試聴をお勧めする曲をいくつか挙げておきます。iTunes Storeでぜひお試しになってみて下さい。

・風のように走れ -Step! Step! Step!-(タイトルデモ)
・風のように走れ -feel Fresh-(風車ヶ原)
・眩き旅路 -feel Turmeric-(金色砂丘)
・見出すべきもの -rainbow Chaser-(ねじれた杖の城)

この辺の曲がツボにはまれば、アルバムごと買っても後悔することはないでしょう。

言わば、ゲームミュージックの「ネオクラシカル」。私はタイトーの回し者でも何でもありませんが、最近のゲームミュージックに満足できない方にこそお勧めしたい作品です。
posted by まれいん at 02:33| Comment(2) | TrackBack(1) | レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
またまたこんにちは。
ロストマジックは手をつけたことがなかったですね〜。
早速上記の試聴をしてみたいと思います。
いやぁ、A→A’→B→C→Dはすごいですねぇ・・・・
「ゲームミュージック好きだし語れる」って人。周りにあんまりいないんですよねぇ・・・・
このブログみて我慢していますが。
また来ます。
Posted by ジェみにー at 2006年10月30日 10:24
>「ゲームミュージック好きだし語れる」って人
今回のレビューは「語る」というより「暴走してる」だけですが(笑)、私も同好の士を大募集中です。
ぜひまたお立ち寄り下さいませ。
Posted by まれいん at 2006年10月31日 22:43
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Excerpt: ソフトで愛らしい音色がいいですねぇ〜♪・ 雨です。・ 定期演奏会・ラヴェル 「ボレロ」・すたんうぇいすたんうぇい♪(肝・[音楽関連]今更・揉。・目指せ!女ドラマー♪・サックス体験・ボトルブロー・はじめ..
Weblog: 管楽器を極める
Tracked: 2007-08-04 12:30
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