映画などで映像に合成するために描かれた背景画を「マットペイント」というそうです。
このマットペイント、要するにただの平面的な絵なわけですが、最近のものは恐ろしく緻密に描かれているとのこと。例えばここのページにスターウォーズ エピソードIIIで使われたマットペイントがありますが、いくらCGとはいえ、とても描かれたものとは思えないリアルさ、美しさです。
もちろん映画の主役は登場人物でありストーリーなわけですが、ここまで見事に描き込まれていれば、背景だけでも充分に鑑賞に値する“作品”と呼んでいいのではないでしょうか。
ええと、何でこんなことを言い始めたかというと、実は「ファンタシースターユニバース」のサントラを聴きながら、このマットペイントのことを思い出していたからなんです。
「FOR BRIGHTER DAY」Phantasy Star Universe Original Sound Track
ファンタシースターユニバースの楽曲は決して強いテーマ性を持った作風ではないので、いわば「背景」の音楽です。基本的にはストーリーの盛り上げ役に徹していると言っていいでしょう。
ですが、(昨今ありがちな)ゲームの背景の立場に甘んじた存在感の薄い楽曲ばかりの作品とは明らかに“格”が違います。オーケストラシンフォニーを中心とした楽曲はどれをとっても非常にレベルが高く、それぞれが単一の音楽として成立するだけのクオリティを持っているのです。
オーケストラサウンドで作られたゲームミュージックは往々にして「オーケストラ風」の編曲レベルにとどまってしまうものですが、ファンタシースターユニバースの楽曲はそれこそフルオーケストラのために編曲されたと言っていいくらい素晴らしいシンフォニーを奏でています。
宇宙を舞台に闇から世界を救う(メインテーマのタイトルはずばり「Save This World」)という壮大なイメージを見事に受け止め、高いレベルで描き切った曲の数々は、先に挙げたエピソードIIIのマットペイントに比肩するくらいの素晴らしい「背景」であると言えるでしょう。
私も長いことゲームミュージックを聴いていますが、3枚組全69曲という規模の大きなサントラで、どの曲も「はずれ」がないと思った作品は正直言って初めてです。それくらい、個々の曲のクオリティが高いんです。
3枚のCDは、それぞれがファンタシースターユニバースの舞台となるグラール太陽系の3つの惑星のイメージに分けられています。
いかにもSF的な未来的イメージのパルム。
自然が豊かで和風な雰囲気を持つニューデイズ。
荒涼とした開拓地を思わせるモトゥブ。
3人のコンポーザー(小林秀聡さん、熊谷文恵さん、床井健一さん)が各惑星を担当することで、同じオーケストラシンフォニーでありながら、それぞれの惑星のイメージがきちんと描き分けられているところは見事です。しかも、三様のイメージが揃いながらもサントラ全体の統一感は崩れておらず、さらに楽曲のレベルが全て高いところで釣り合っている辺りは全く驚異的と言うほかありません。
ゲームが大作化する中で、最近のゲームミュージックは複数のコンポーザーの協業によって作られることが多くなりましたが、この作品は協業が非常にうまく機能した例と言えるでしょう。
イベントシーンや戦闘シーンの曲も同様に隙のない出来なのですが、特に戦闘シーンの曲が熱いですね。フルオーケストラでこれでもかと激しく盛り上げてくれます。ちょっと前作(ファンタシースターオンライン)の香りがするところも元PSOプレイヤーとしてはうれしいところです。
ボーカル曲はアレンジを含めて4曲ありますが、これもまたいいんです。その中でも、多分メインテーマだと思われる "Save This World" はパワフルで凛々しく、一方でアルバムのタイトルにもなっている "For Brighter Day" はゆったりと明るく希望を歌い上げています。どっちも個人的にかなりお気に入りで、以前作ったプレイリスト「GAME MUSIC DIVAS」に間違いなく追加決定です。
と、気がつけばすっかりベタぼめモードになってしまいましたが、ほんとにこのサントラは文句のつけようがありません。ファンタシースターユニバースを今までご存じなかった方にも、ぜひお勧めしたい作品です。
鑑賞する際は公式サイトで世界観や設定を見ながら聴くと、一層味わいも深くなります。もちろん、可能であれば実際にプレイしてみて、どの曲がどんなシーンでどんな背景を描き出しているのか確かめてみるのが一番なのですが……。
はい、お気づきかもしれませんが、実は私も未だにプレイできておりません。ごめんなさい。
2007年01月13日
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