もういろんなところで詳細なレポートが上がっていますので、細かいところは省略して個人的に目についたところや感じたことをメインに書いていこうと思います。
■観客について
観客の数が多かったですね。2階席や3階席の入りがどれくらいかわからなかったので何とも言えませんが、入場者数は明らかに去年より多かったでしょう。「EXTRA」と比べて同じかそれ以上は入っていたんじゃないでしょうか。
見た限り、客層は10代後半〜30代がほとんど。それ以上の年齢層の方はほとんど見かけませんでした。当たり前かもしれませんが、やはりゲームミュージックはまだゲーム文化の延長線上という位置にあるようです。
あと、去年と比べて違ったのは、外国人の方をちらほらと見かけたこと。ゲームミュージックコンサートが盛んに行われている外国の方々にとって、本家(?)日本で開催されるコンサートがどんなものであるのかは、やはり気になるところなのかもしれません。
■演奏楽器、舞台装置など
今回はオーケストラにコーラスとフォーリズム(キーボード・ギター・ベース・ドラムス)が加わった構成。表現の幅が拡がる=演奏できる曲目が増える、という意味では良いことだと思います。特にコーラスについては、本来コーラス付きの曲をそれ無しで演奏するのは実に味気ないものなので、必須要素として今後も導入してもらいたいものです。
一方、フォーリズムは使い方次第でオーケストラと食い違ってしまう可能性のある諸刃の剣。無節操に使うと浮いたりしらけたりしてしまうので、慎重にかつ効果的に利用してもらいたいものです。今回は……たまに浮いてしまう場面もありましたけど、まあ概ねよろしかったんではないかと。
それと、今回はオーケストラ上方にスクリーンが設置されて、演奏と同時に曲に関係する映像が流れるようになりました。もっとも、海外のゲームミュージックコンサートでは定番の演出手法なので、日本でもようやっと実現した、といった方がいいのかもしれません。映像の内容については(後述するように)まだ満足いくものではないので、今後のレベルアップに期待したいところです。
■演奏曲について 〜第1部〜
1.「大乱闘スマッシュブラザーズX」より メインテーマ
コーラスにソプラノ(高橋織子さん)とテノール(錦織健さん)が加わって、パワーアップした構成をいきなり見せつけるかのような、贅沢で豪華な演奏。こういう本格的な歌曲をゲームミュージックとして鑑賞することができるのは、ファンとしてある意味誇らしいことでもあります。見事でした。
もっとも、発売前のゲームの曲を堂々と1曲目に持ってくるというのは、少々図々しい感じがしますけどね。発起人の面子を考えたらやらずにはいられないんでしょうけど……「大人の事情」ってやつでしょうか。
2.「ロコロコ」より ロコロコのうた
もちろん、コーラスの方々が歌うんですが……声が朗々としてる分、何だか変に大人びた「ロコロコ」になってしまいました。児童合唱団とかが歌ってくれたら、ずいぶん印象も違ったのではないかと。
スクリーンにはゲームのビデオ映像と一緒に歌詞も出たものの、当然ながら(?)観客は誰も歌わず。指揮者の竹本さんが手拍子を求めたりする辺り、何だかファミリーコンサートのようなノリを要求された感がありました。
3.アクトレイザー
「16年前、当時のゲーム音楽業界にとってはひとつの事件だった」「これを聴いてFF4の音色を全てサンプリングし直した」(以上植松さん談)とまで言わしめたアクトレイザーですが、その割に演奏の中身はかなりあっさりしたものでした。映像もソフトのパッケージを映すだけの味気ないもの。おそらく版権の都合なのでしょうけど……。この辺については、海外の方からも酷評されています。アクトレイザーには期待していたファンも多かったと思われるだけに、もうちょい何とかならなかったんでしょうか。
もっとも、実際にオーケストラのライブ演奏で聴いてみて、これがSFC用に作られた音楽としていかに“異常”であったかということを再認識させられました。それだけでも聴く意義はあったかもしれません。
4.シューティングメドレー
マニアのお約束として、全曲リスト行きます。
・ギャラガ(オープニングBGM)
・グラディウス(1面 "Challenger 1985")
・ツインビー(パワーアップ前 "TWINBEE'S HOME TOWN SONG")
・スターフォックス(曲名不明)
・スペースインベーダー(行進音)
・ファンタジーゾーン(1面 "OPA-OPA!")
・アフターバーナー("AFTER BURNER")
・ダライアス(洞窟面 "CAPTAIN NEO")
・スペースハリアー(メインテーマ "THEME")
・シルフィード(タイトルデモ "The Legend Of Silpheed")
・R-TYPE(ボスBGM)
・スターフォース(多分ステージBGM)
・戦場の狼(ステージBGM)
・ゼビウス(ゲームスタートBGM〜ステージBGM)
・スターソルジャー(ステージBGM)
・沙羅曼蛇(ボスBGM "Poison of Snake")
・スターラスター(エンディング)
全17タイトル……こうしてみると、けっこう数がありましたね。
それだけに、少々細切れな感じもありましたが、まあメドレーですからやむを得ないかと。
それぞれの曲にゲームのビデオ映像がシンクロしていったのですが、グラディウスとツインビー、沙羅曼蛇についてはイメージ映像(火山、野菜、蛇?)のみ。要するにコナミが映像使用許可を出さなかったんですね。肝っ玉の小さいことで。
スペースインベーダーは、インベーダーが移動する「ダッ、ダッ、ダッ、ダッ」という行進音だけだったんですが、それをわざわざストリングスで再現するバカバカしさがある意味面白かったです(多少皮肉入り)。
アフターバーナーではギターとドラムスがさっそく活躍。うまくオリジナルのテイストを再現していました。
一方、ダライアスでもメロディをギターで弾いていましたけど、こちらはちと浮いていた感じがしました。無理せずオーケストラのみで再現した方がよかったような気がします。
シルフィードは、PC-88版のタイトルデモというかなりマイナーな選択。しかしながら見事な編曲で、楽曲としての良さを一層引き立てていました。機会があれば単独曲として「Return Of Xacalite(ラスボスBGM)」をフルオーケストラでぜひ聴いてみたいものです。
戦場の狼は、そもそもシューティングゲームなのかという疑問はさておき(アクションシューティング?)オーケストラで演奏すると予想以上のかっこよさ。短いながら実に魅力的でした。
ゼビウスは、ステージBGMの例の「ピロリラピロリラ……」をキーボードで演奏。観客からは「そうくるかよ!」という苦笑が漏れてました。スペースインベーダーもそうでしたけど、そこまでして無理にメドレーに入れなくてもよかったんではないかと……。企画上、しかたなかったんでしょうかね。
リストを見てもらえばわかるとおり、いずれのタイトルも古いものばかりです。シューティングゲーム黄金期である90年代のものがほとんど入っていなかったのは、ある意味驚きでした。マニアックな選曲になるのを防ぐために有名な定番タイトルを選択したのかもしれませんが、観客の年齢層を考えるとここまで古いタイトルばかりでは逆に曲を知らない人の方が多かったのではないかと。どうせマニア寄りの企画なんですから、有名とか無名とか気にせずに、音楽として優れた作品を積極的に紹介してほしかったです。
5.「エースコンバット・ゼロ ザ・ベルカン・ウォー」より ZERO
ゲームミュージックには、初めて聴く者を驚かせる独特の醍醐味がふたつあります。「音楽ジャンルを超越したハイブリッド性」と「(いい意味での)映像に対する裏切り」です。
今回のコンサートで、その醍醐味を最もいい形で表現していたのがこの「ZERO」だったのではないでしょうか。
タイトル自体は決してメジャーなものではないので、おそらくこの曲を初めて聴くという人が多かったのではないかと思います。
フライトシューティングにフラメンコという異質な組み合わせによる違和感と、オーケストラにアコースティックギター&カスタネットという音楽的な違和感。これらの違和感を高いレベルで融合・昇華させて、最終ミッションの曲としての緊迫感と悲壮感を描き出した「ZERO」は、ゲームミュージックの特異な醍醐味がたっぷりと詰まった名曲です。
そんな曲を、ゲームのビデオ映像を見て“裏切り”を楽しみつつ、迫力あるライブ演奏で聴けば……ゲームミュージックを多少なりとかじった人なら、初めてでもぐらりと惹かれることは間違いないでしょう。
いわんや、それを聴きながら実際に最終ミッションをクリアした経験があれば、そりゃもう感涙にむせぶというものです。いやもう、聴きながらほんとに泣きそうでしたから。
他のどんなジャンルの音楽でも味わえない感動がそこにありました。
これだから、ゲームミュージックはやめられません。
……ただ、それだけに、トレイラームービーをループさせるだけの安易なビデオ映像にはかなり不満が残りました。もっといい場面、ゲーム中にたくさんあるだろうに、と。
こういうところで手を抜かれると極めて興醒めですから、次回以降(があるなら)映像面も油断なくきっちり作り込んでほしいものです。
6.「ワンダと巨像」より 異形の者たち 蘇る力
これはまあ、オリジナルがオーケストラ形式ですし、稀代の名作ですから、ちゃんとしたオーケストラで演奏すれば鉄板と言っていいでしょう。今回は2曲をミックスするような編曲だったようですが、オリジナルを忠実に再現するアレンジだったので、あまり驚きはなかったです。
逆に言えば、オーケストラ形式で作曲された作品をオリジナルに忠実な形でライブで堪能できることを喜ぶべき……なのかもしれません。
7.「ファイヤーエムブレム」より ファイヤーエムブレムのテーマ
ファイヤーエムブレムのテーマって、どんな曲だったっけ……と思っていたら、再びコーラスとソプラノ(高橋さん)、テノール(錦織さん)が登場。
「ふぁーいやーぁーえーむぶれむ てーごわい、しみゅれーしょーん」
あのCMの歌でした。
ゲームミュージック的には歌無しの形で演奏するのが妥当なのでしょうけど、あえて歌入りで演奏するところがミソなのでしょうね。ロコロコの時もそうでしたけど、何というか、親しみやすさを強調するというか……そういう演出意図を感じる演奏でした。
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以上で第1部は終了。
かなり長くなってしまったので、第2部以降は次の記事に書きます。
僕も一人のゲームミュージックFANとして(と言って範囲は広くないのですが)大阪公演を聴きに行きました。
僕も選曲や構成、音響について思うところがありましたが、その分サービス精神でプラスマイナスゼロだったかと思います。
一番まとまりがあって良作だったのはエースコンバットかな。
またレポートの続き、楽しみにしています。
はじめまして。
大阪公演は横浜と比べてどうだったのでしょう……とても気になってます。
にしても、本当なら「プラス」で終わるべきところが「プラスマイナスゼロ」だったのは残念でしたね。
後半のレビューでも触れましたが、今回の「2007」はいろいろと課題の残る内容だったと思います。
もっとも、それもイベントとして進化しているがゆえの「歪み」だと思うので、前向きに修正していってもらいたいものです。
「ZERO」はよかったですよね。エースコンバットシリーズは他にもいい曲がたくさんありますから、定番タイトルになると個人的にはうれしいです。
私も行きました〜。
アクトレイザーは本当に残念でした・・・
演奏は素晴らしかったですが、「フィルモア」が欲しかったです・・・まぁ、あれをオーケストラでは無理っぽい気がしますが(笑)
ZEROは良かったですね〜、スマブラも良かったけど、第1部最高はZEROでしたね〜。
次回はもうちょっと改善して欲しい所です。(いろいろ)
どうも、お久しぶりです。
アクトレイザーは、もったいないことをしたなと思います。せっかくのビッグタイトルなんですから、もっと腰を据えて聴けるくらいのボリュームが欲しかったです。
ZEROは、初めて聴いた方にもかなり評判が良かったようですね。エースコンバットシリーズのファンとしては、してやったりという気分です(笑)。
エースコンバットシリーズにはオーケストラで映える曲がまだまだたくさんありますから、今後も取り上げていってくれればと思います。