もうネタとしてはすっかり古くなってしまって恐縮ですが、よかったらお付き合い下さい。
まず、良かった点から。
これは、何と言ってもコーラスやフォーリズムなどの導入で表現の幅が大きく拡がったこと。これによって、演奏できる曲目が相当増えたと思われます。コーラスはともかく、フォーリズムはオーケストラとのバランスが難しいでしょうけど、ハイブリッドな音楽であるゲームミュージックを演奏するにあたって頼れる「武器」となることは間違いありません。
とはいえ、表現できることが増えたからといって、何でもかんでもやろうとするのは混乱のもとです。というわけで、以下今回の「2007」で納得いかなかった点について述べていきます。
■第2部の構成について
演目や内容からして、第2部ではゲームミュージックの多様性を見せる意図があったと思われます。[H.]やghm sound teamといったロックバンドに始まり、誰もが知ってる名作でマイナーな海外作品をはさみ、オケのメドレーからノータイムでサクラ大戦の歌謡ショウ。まあ、たしかに硬軟取り混ぜたバラエティに富む構成であったと言えば言えるかもしれません。が、実際に聴いた者の立場から言わせてもらえば、コロコロと変わる会場の雰囲気に戸惑い……というか、ついていけない居心地の悪さを感じました。
特に、[H.](大阪ではghm sound team)とサクラ大戦については正直どう反応していいかわかりませんでした。観客に高いテンションを要求するこうした演目は、オーケストラによる上質な演奏を鑑賞する雰囲気とは相反するものです。
もしかしたら「ゲームミュージックっていろんなものがあるでしょ?」ということが言いたかったのかもしれませんが、これでは「SYMPHONY OF GAMES」ではなくて「GAME MUSIC VARIETY」です。
いろんな曲をやってみたいという気持ちはわからないでもないですが、オーケストラをメインに据えるのならば、一貫してオーケストラを主体とした演目に統一すべきでした。半端にイロモノ(失礼)を混ぜるのは、聴く側を混乱させるだけです。
図らずも「EXTRA」終了後に私がゲームミュージックイベントについて危惧した事態が、今回の「PRESS START」でも起きてしまったことを非常に残念に思います。
たしかにゲームミュージックには多種多様な側面があります。ですが、「やりたいから」「できるから」といって、何でもかんでも演奏すりゃいいってもんじゃないんですよ。聴く方だって、それなりに期待するものがあるんですから。オーケストラにはオーケストラの良さを求めて聴きに来てるんですよ。それこそ、客席の空気を読んでくれ、と言いたいです。
ひとつのイベントであれもこれもと欲張るのではなく、コンサートはコンサートとして、ライブはライブとしての雰囲気を考えて、それに適した選曲を行なってくれることを切に願います。いくらゲームミュージックが好きだとはいっても、これ以上「ごった煮」を食わされるのは勘弁してもらいたいです。
■THE BLACK MAGESについて
一方、企画側が観客に媚びているのではと感じたのは、ラストに登場した THE BLACK MAGES(以下「TBM」)。「片翼の天使」を演奏するだけならオーケストラだけで充分だったと思えるのに、何でわざわざアレンジバージョンを披露するためにTBMが出てきたのか。
「そりゃラストなんだし、ファンサービスでしょ」というのがおそらく大多数の意見=正解なのでしょう。けど、それはあくまでTBMのファンに対するサービスであって、観客全体に対するサービスだったのかと考えると、いささか疑問に思えてしまうのです。
TBMが今のゲームミュージックイベントにおいてアイドルと言えるほどの人気を誇っていることは理解しています。ですが、あの会場にいた観客全員がTBMのファンであったかというと、必ずしもそうではないはずです。TBMのファンではない人、FF7を知らない人にとって、あのラストは置いてけぼりを食らったような感じがしたのではないでしょうか。
古今東西のゲームミュージックをオーケストラで楽しむはずのイベントが、最後の最後で植松一派が内輪受けに走ってしまったような気がして、個人的には後味の悪さが残りました。
人気も実力も兼ね備えたTBMならばこそ、イベントの最後に出てきておいしいところをかっさらうような真似はせずに、定常的に単独でライブをやって頂いた方がファンの皆さんもより幸せになれるんではないでしょうか。
■選曲について
すみません、ちょっと話がそれてしまいました。話を全体的な総括に戻しまして、選曲について少し考えてみます。
前回の「2006」に比べて、今回は割と有名どころの曲を揃えた感があります。ゲームミュージックをある程度かじっている人であれば、半分以上のタイトルは耳にしたことのあるものばかりだったのではないでしょうか。しかも、ほとんどがコンシューマ機のタイトル。「2006」ではもうちょっと幅が広かったように思うのですが。良く言えば手堅い、悪く言えば守りに入った選曲だったように思います。
ただ、その一方で第1部のシューティングメドレーや第2部のドラキュラメドレーでは古典のみで固めたマニアック……というか重箱の隅をつつくような選曲もあったりして、かなり両極端な印象がありました。
それにしても、私がシューティングゲーム好きだから言う面もあるんですが、シューティングメドレーの内容はあまりに古過ぎました。古典を並べれば大部分の人はわかるはず、という計算だったのかもしれませんが、ここまで古いとむしろ知らない人の方が多いのではないかと。80年代後半〜90年代の作品を当たれば、音楽的に無視できない曲はたくさんあると思うのですが……。今ひとつ選曲の基準がわからない内容でした。
「2006」でのナムコアーケードメドレーでも思ったのですが、アーケード作品が絡むマニア向けの選曲は、どうも時代が偏る傾向がありますね。企画側にアーケードものに詳しい方がいらっしゃらないんでしょうか。まあ、事情はよくわからないのであまり突っ込まずにおきますが、もう少し研究して頂きたいと思います。
■まとめ
今回の「2007」の方向性をまとめると、
「みんな知ってる曲でみんな楽しもうよ」
「いろんなゲームミュージックを聴いて楽しもうよ」
という辺りになるのではないでしょうか。
この2つに共通する「楽しもう」という姿勢は、決して悪いことではありません。
ですが、前回の「2006」に比べると緊張感が薄いというか、楽しさや親しみやすさを演出しようとするあまり馴れ合いを求めるような雰囲気があったのは残念でした。
一般的なコンサートやライブと違い、全ての人が知ってる曲ばかりとは限らないゲームミュージックのイベントにおいては、予定調和にならない緊張感が常に存在します。今回の「2007」では、その緊張感を薄めて、予定調和を求めるような傾向があったように感じられました。
もちろん、誰も知らないような曲ばかりやってもそれはそれで面白くないのでしょうけど、「この曲なら知ってるでしょ」と観客にすり寄るような姿勢で接していたら、ぬるま湯のようなイベントになりかねません。
せっかくオーケストラというリッチな演奏形態をとっているのですから、「この曲をいい音楽として聴かせたい」という毅然とした姿勢で選曲なり演出なりをしてもらいたいものです。
そういう意味では、エースコンバット・ゼロやOblivionといった“マイナーだけどいい曲”をあえて紹介してくれたことは評価したいのですが、いかんせんそういう傾向も有名どころの曲の狭間に埋没してしまった感があります。
次回以降は受け狙いのバラエティではなく、音楽イベントとして主張のあるパフォーマンスを見せてくれることを期待しています。
私も選曲を見たときは、随分有名どころが多いなって思いました。
そして、全ての演奏を聴き終わって「会場も大きくして客を呼びたかったんだなぁ・・・」ってのが私の今回の感想ですね。
私は「様々なゲームミュージックをオーケストラで皆で楽しむ」ってのをこの公演の趣旨だと思って前回も今回も参加しました。
今回はあまりにもコンサートからかけ離れてしまったのがとても残念でした・・・
まれいんさんがお書きになった内容はほとんど私も同感です。
次回はもう少し、原点回帰して欲しいところです・・・
・・・後、個人的にちょっとだけ不満だったのはコーラスが少し弱かったところですかね・・・
あ、コーラスに関しては個人的ぼやきなので無視してくださいね!(笑)
では、また伺います〜。
おっしゃるとおり、おそらく今回の「2007」では「観客動員を増やして」「演奏能力も上げて」「バラエティも多くして」……というように、あらゆる面で規模を「拡大」させることが目的だったのでしょう。
その結果、良い結果が出た一方で、課題点も多く浮かび上がったということなのだと思います。
「PRESS START」はまだ2回しかやっていませんから、未だ試行錯誤をすべき段階です。コーラスやフォーリズム、映像の使い方等についても、改良すべき余地はたくさんあると思います。
そういう意味では、今後を暖かく見守っていかねばならないのでしょうけど……海外でのコンサートに比べるとまだ劣る面があるとも言われていますし、早急にレベルアップしてもらいたいものですね。
またぜひお越し下さいませ。
ということで、実は上記参照エントリのコメントに書いた部分の続きなんですが(^^;)、今回の「PRESS START 2007」、個人的には前回のほうが良かったカナー、というのは同感です。
演奏全般は前回よりも良かった気がします。(前回は、オケとエレキギターのセッションなど新しい事をやったのは評価できますが、如何せんバランスが悪かった) ただ、選曲がメジャー寄りだった気がするのは同感で、やはり守りに入った印象があります。
でも、今回の「PRESS START」は、前回のアンケート結果を反映して構成されたものですよね? ということは、「大多数のファンが望んだ結果」があの形…ということなんじゃないでしょうか。 結局は、「あまりに広い意見の中間地点を取った形は、万人受けするがトガった部分が無くなって来る」という事なのかなぁ…と。 もし、今回のイベントで「イマイチ」という意見が多かったとすれば、もう暫くイベント内容は迷走するんじゃないでしょうか。 企画した側もきっと「良かれと思ってやっているのに…何故だ??」と思ってるのではないかとw
いっそのこと、「我々が聴いて欲しいのはこんなのです!」的な色が強く出たイベントにしていくのがいいんじゃないでしょうか。 客に媚びるのではなく、「自分達がコレが好きだから聴いて欲しいんだ」的スタンスで。 …でも、ファミ通主催である以上は多分無理かも。(^^;)
余談ですが、休憩時間にロビーを歩いていると、浜村通信(と思われる人)に2回もすれ違いました。 「あー、あのイラストのまんまの人だ!」と妙に感動しましたw
ファミ通や植松さんが関わっている以上、おそらく一番多い要望を尊重したら「FF&TBMコンサート」になってしまうでしょうね(苦笑)。
それはさておき、今回の「2007」が守りに入っていた、という意見には同意します。
選曲の基準がわからないので推測にしかなりませんが、もし「2006」のアンケート等を踏まえてメジャーな曲を揃えたというのであれば、やはりそこにはイベントとしての主張が欠けていたのではないかと思われます。
リクエストに応えることも大事ですが、「聴きたいもの聴かせましょう」という迎合に終始するのではなく、「これを聴かせたい」というはっきりした姿勢があった方が、最終的にイベントとしては魅力的なものになるのかもしれませんね。そういう意味では、やはり「2006」の方が意気込みが感じられてよかったと思います。
あとは……企画側の選曲センスが時代遅れにならないことを願いたいです。古い曲で多数の支持を得るのもいいですが、新しい曲を発掘する姿勢もより積極的に見せていってほしいものです。