いわゆる次世代機と呼ばれるこのマシンには、ひとつ気になる機能が搭載されています。
以下、Xbox360公式サイトから。
また、自分の好きな曲を BGM に設定してどんなゲームもプレイできます。コントローラー のXbox ガイド ボタンを押して Xbox ガイドを立ち上げ、オプションメニューにたどりついたら、お気に入りの曲を自分の好みの順番で並び替えるだけ。簡単操作で、その時の気分にぴったり合ったBGM を楽しむことができるのです。ゲームミュージックという概念を潰しかねないこの機能、皆さんはどうお思いでしょうか。
今回は1ヶ月ぶりに(汗)、この辺をいろいろと考えてみたいと思います。
1.ユーザーから見た場合
ユーザーサイドから見れば、これは歓迎すべき機能だと思います。少なくとも、ゲームをプレイする環境をよりプレイヤー好みにカスタマイズできるという自由度の高さは、全てとは言わないまでもプレイヤーに恩恵を与えることでしょう。実際、Xbox360の日本発売と同時リリースされるリッジレーサー6においてもこの機能は採用されていて、ひとつのセールスポイントとしても積極的に紹介されています。
たしかにドライビングゲームとは相性がよさそうな機能ですから、それを利用しない手はありません。
はからずも、「ゲームミュージックのアイデンティティに対する不安」という記事においてbaddyさんがコメントで紹介して下さった、頭文字Dのスタッフの言葉が現実になったわけです。
2.ゲームミュージックに与える影響(その1)
では、ゲームミュージックという面から見た場合、Xbox360のこの機能はどういう影響を与えるのでしょうか。プレイヤーが気に入らなければ、即座に他の曲と取り替えられてしまう音楽。そういう見地からすれば、どのゲームの楽曲も他の一般的な音楽と同等に扱われることになります。曲を選ぶ判断基準はただひとつ、「プレイ中に聴いていたいかどうか」、それだけです。
極論を言えば、「ゲームにおまけでついてきた楽曲集」か、手元にあるお気に入りのアーティストのアルバムか、どちらを選ぶも気分次第ということになるわけです。
さて、こうなった場合「ゲームのおまけの楽曲」の立場はどうなるのでしょう。その楽曲をはたして「ゲームミュージック」と呼んでもいいのでしょうか。
それが単なるおまけではないとする条件がひとつあるとすれば、その楽曲が何らかの形でゲームとリンクしていることでしょう。雰囲気、世界観、映像とのシンクロ等々、どんなことでもいいから、ゲームをする時にそれを選ぶ必要を感じさせる楽曲でなければなりません。それが成立して初めてその楽曲は「おまけ」ではなく「そのゲームの曲」と呼ばれることになるのだと思います。
一方、「おまけ」がゲームと何の関わりのない楽曲であっても、プレイヤーに好んで選択される場合もあるでしょう。しかしそれは逆に言えばゲームがあろうがなかろうがプレイヤーのお気に入りになっているということであって、一般的なアーティストの楽曲と違いがないということでもあります。つまりその楽曲は“ゲーム”という言葉が介在しなくても単体として存在しうるわけで、すなわちそれは「ゲームミュージック」と呼ぶ必要がない、ということになります。
このように、プレイヤーがゲーム以外から好きな楽曲を選べるというシステムは「ゲームに付属する音楽」が存在する理由を鮮明にあぶりだす仕組みだと言えそうです。
その楽曲はゲームにとってのベストチョイスとして存在しているのか、それとも他の曲で置き換えても構わない程度の存在なのか、はたまたゲームとは無関係に「いい曲」だから付属しているだけなのか。こういった微妙な部分をきっぱりと際立たせてくれる機能を果たすことになるかもしれません。
さらに突き詰めれば、ゲームにわざわざ音楽をつけること自体必要なことなのかどうか、といった根源的な問いさえも浮き彫りにする可能性もあります。「ゲームミュージック」という概念にとってはまさに存亡を問われる仕組みになりそうです。
3.ゲームミュージックに与える影響(その2)
もうひとつ言えるのは、このシステムがゲームミュージックに対する何らかの評価の導入を促すことになるかもしれない、ということです。例えば、あるゲームでプレイヤーからほとんど選択されない(いつも他の曲に置き換えられてしまう)曲があったとして、もしそれがメーカーの知るところとなったら、その曲を作ったクリエイターへの発注は以後減っていくことになるでしょう。何しろ、その曲の存在が無意味であれば、わざわざそれを発注する意味もなくなるわけですから。
資金を投入した以上、それが利益に結びついているかをチェックするのは企業として当然。ということは、お金を出してゲームに音楽をつける以上、その音楽が適切に費用対効果を生み出しているか(要するに置き換えられて無意味な存在になったりしていないか)をメーカーが検証しようとする可能性も無くはないのです。
そうなれば、ゲームで使用された楽曲に対する評価手段が何らかの形で求められることになるでしょう。特定クリエイターの固定ファン層による好意的な意見だけではなく、もっとマイナーな支持やネガティブな意見などについても収集検討されるようになるかもしれません。これは個人的にはちょっと期待したいところです。
これと全く逆の動きとしては、「どうせプレイヤーが入れ替えちゃうんだから、適当な曲でいいよね」という投げやりな姿勢がメーカー側に生まれてしまうことが考えられます。ゲームに収録される楽曲はあくまで参考用、「こんなシーンにはこんな雰囲気の曲がいいかも」というご提案カタログとして残存するようになるかもしれません。
4,まとめ
以上、長くなりましたが、冒頭のXbox360の機能は、ゲームミュージックにとってこれだけ様々な影響をもたらす可能性を秘めているということが考えられるわけです。ゲームとより深いリンクを目指して存在意義を高めるか、凡庸な解でお茶を濁すか、ただの音楽アルバムと化すか。まさに今のゲームミュージックが迷走している部分をプレイヤー自身が取捨選択できるというのは、実に興味深いことであり、また不安で恐ろしげなことでもあります。
ふと思ったのですが、どのゲームのどの曲がどう置き換えられたのか、ユーザー一人ひとりの選択を集計できたら面白いでしょうね。これこそ嘘偽りのない人気投票。退屈な曲は淘汰され、優れた曲が生き残る。ゲームタイトルも作曲者も一切関係ないプレイヤーの率直な評価というものをぜひ見てみたいものですが……さすがに無理でしょうね(苦笑)
[追記]
I.F.S.さんの記事にトラックバックさせて頂きました。プレイヤーの視点からこの件について考察されていますので、ご覧になって下さい。
ええと、正しいかどうかというよりも、Xbox360の件の機能はそれらを同列に扱うかどうかの判断を個々のプレイヤーにゆだねているのだと思います。
プレイヤーの受け入れ方次第によってはジュークボックス的な音楽がゲームミュージックという概念を飲み込んでしまうかもしれませんし、そうはならずに従来のゲームミュージックと何らかの棲み分けができるようになるのかもしれません。それは今後プレイヤー全体がどう判断するかによって決まってくることでしょう。
その判断によっては、惰性で何となく決まっていた現在のゲームミュージックの立ち位置がはっきりと定められてしまうかもしれません。
そういう意味においてもこの問題(?)は実に興味深いものだと感じています。
ですから、ながら族としては歓迎したいです。
新しい側面として、パッケージとは別に公式にプレミアムミュージックディスク等の販売、配布があるでしょう。メタルギア3でコスチュームチェンジ可能なDVDが配布されたように。
また、オリジナル作者もしくは同人達のアレンジミュージックを差し替えてプレイ出来たり、GM自体に
幅が広がると思います。
たとえばチップチューンバージョンをつくって、それを差し替えてプレイしたり・・
特にレトロゲームが復刻されたら、、、と想像は尽きません。
しかし、効果音はどうなるんでしょうか・・?
いかに差し替え可能であれ、
そもそも音楽自体がはいってないゲームがリリースされることはありえないと思います。
「ゲームミュージックのアイデンティティに対する不安」はともかく、ゲーム用につくられた音楽が無くなることは無いでしょう。
ゲームをすばらしくするために、音楽に力を注ぐのは当然の事でしょう。
パズルゲームにエディットモード、オリジナルステージ作成があったりしますが、
すべてのプレーヤーがエディットして遊ぶわけでは
ないように、RPGの音楽をすべて自分で選曲するのは難しいと思います。
種類はどうであれ、ゲームに用意された音楽はいままで通りかと。
逆に、パズルゲームやドライブゲーム等では容易に置き換えができそうです。要するに、ゲームの種類や内容によって入れ替えの可不可が自ずと決まってくるということでしょうか。
音楽が全く入っていないゲーム、というのは極論ではありますけど、音楽を入れ替えることを前提として、ゲーム内容と音楽を分離したゲームというのはあり得ると思います。
というか、リッジレーサー6はまさにそれを実践しようとしているような気がします。
ちなみに、リッジ6では音楽をHDD側に入れ替えても効果音はちゃんと入るそうです。
プレミアムディスクやアレンジバージョンに差し替えるというアイデアは考えもしませんでした。
同じゲームのシーンでもプレイヤーに違ったイメージを与えたり、腕に覚えのある同人が「俺ならこういう曲をつける!」とオリジナルに挑戦したりもできるわけですね。それはたしかに面白そうです。うん、どうして気がつかなかったんでしょう(笑)
こうしてみると、私は負の側面ばかり気にしていたようですね。こういう面白い応用とかを考えつかなかった辺り、自分は保守的なんだなぁ、と思った次第です(苦笑)
変えられやすいであろうパズルゲームにしても元々が思考の邪魔にならないようにBGMに徹しているものが大半で、思考パターンが自分なりに確立してしまった時点で役目は果たしたと言えるかもしれません。
ぶっちゃけJ-POPなどでで満足してしまえるのはライトユーザーかやり込みまくって気分を変えたい人のような気がしないでもないし、そうそう悲観する事もないかと(^ ^
この問題、こんなに深刻に考えることあるんでしょうか?
最悪の場合はこうなる事もあるかなって思う部分もありますけど、クリエイターの士気が下がるという捕らえ方は、納得しかねます。
ゲームクリエイターは、クリエイターはそんな半端な気持ちで続けられる職業ではないと思います。
仮にこのXBOX360の新機能で適当な仕事をしてしまう人が出たとしても、そんな人はこの機能がなくても業界から消えていく存在だったのでしょう。
クリエイターはどうでもいいと思われる様なものを適当に創るほど暇ではありませんよ。(そんな人もいるかもしれないけど)
ちなみに、「ゲームミュージックに与える影響(その1)」も考えすぎかと思いますよw
ゲームの曲はおまけでしょうけど、欠かせないおまけです。
ためしにアクションゲームなどのBGMだけ止めて他の極を流してみてください。超違和感ありますよ。
ゲームは天から降ってくるものではなく、人が作るものです。価値観の差はあって当然。
よりユーザーが遊びやすくなったというだけで、今までと本質は変わらないと思います。
すみません、私もゲームの音楽を愛するものでして、熱くなってしまいました。
ゲーム会社などで働いた経験もあるので、ちょっと敏感になりすぎたかもしれないけど、クリエイターの人たちはこの程度で適当になるような人たちじゃないです。
オモシロ機能として、安心してこの機能を受け入れて大丈夫かと思いますよ!
長々とすみませんでした。
私も、より「ゲームミュージックらしい」楽曲がこの機能によって浮かび上がってくることを期待しています。
ただ、(私たちのように)ゲームミュージックを特に好んで聴いているファンが思うほど、世の中の人はゲームミュージックに関心を持っていないものです(一部超メジャータイトルを除き)。
そういったライトユーザーが多くいる中で、「ゲームミュージックらしい」音楽がどれだけ生き残ってくれるのか、私はやっぱりその辺が心配なのです。まあ、過度に悲観視するのも良くないとは思いますが……。
>チャックさん
もちろん、クリエイターの方々が手を抜くとかそういうことは考えていません。私とてゲームミュージックファンの端くれ、クリエイターの方々に対する敬意は充分に持っています。
問題は、楽曲を発注するメーカー側がどう考えるか、ということなのです。
ゲーム会社にお勤めになった方にこういうことをいうのは失礼かもしれませんが、メーカーとクリエイターが発注・受注関係にある現状において、メーカー側がゲームミュージックに対してよりライトな方向性を目指せば、ゲームとの結びつきが薄い(けど一般受けはしそうな)音楽が主流になってしまうことも充分考えられるのです。そして、今回の新機能がメーカー側にそう考えさせるきっかけにもなりかねない、という危惧があるのです。
もちろん、メーカー側もそう安易に低きに流れるようなことはしないと信じたいのですが……すみません、ちょっと疑心暗鬼になってるかもしれませんね(苦笑)
先のコメントにもありましたように、Xbox360の新機能はより面白いことができるようになるという側面もあります。そういったポジティブな変化は歓迎しつつ、今後の推移は注意深く見守っていきたいと思います。
いわゆる簡単な音ネタ的な使い方です。
またサターンでも「テクノモーター」ってシーケンスソフトもあって、こっちはできたか・・?
プレステ2、ドリームキャストはMP3をメモリ、ハードディスクに取り込んでジュークボックスってか、音ネタ的使い方ではなく、音を聞けたと思います。
ハードにユーザーのこしらえた音を取り込む機能は今に始まったことではありません。
さて、xボックス360ですが具体的にジュークボックス機能といってもどの程度出来るのでしょうか?
すべてのゲームがミュージックセレクトが可能で、
それを差し替える機能が備わっているのか。
もしくはゲーム内容を問わずに、ハード側で効果音だけならす用に設定して、単純にゲーム場面が変わろうが、お気に入りの自分の音楽ファイルを垂れ流すことが出来るのか・・?
でもユーザーがどうこの機能を使うのか興味ありますよね。
眠いっす。
メーカーとクリエイターが発注・受注関係にある現状>
仮にアタシが現場ではなくパブリッシュ側のプロデューサーだったら、単価の高いクリエイターは切って納期最優先の外注に買いきりで発注するでしょうね。
現状ゲームの音楽は誉められることはあっても、けなされることはあまりないですから、いいかげんな出来でも音量下げちゃえば文句は出ないだろうという、このうえなくユーザーを馬鹿にした打算ですけど。
そうですね、たしかに過去のハードでもユーザー側で音楽を取り込む機能がなかったわけではないです。
Xbox360の場合はジュークボックス機能を公式にサポートして、あまつさえそれを「売り」として利用を推奨しているところがポイントだと思います。
つまり、一部のゲームでマニアック(?)に行われていたことが一般的な手法として活用されるわけです。
そうすると、どんなゲームがこの機能をどのように使ってくるのか、そもそも全てのゲームで利用できるのか等々、いろいろ気になってきますよね。
日本でもリリースされれば、その辺もレビューされたりするのでしょうから、少し様子を見てみましょう。
>Tilさん
もう一部では成り下がって……げふんげふん。
それはさておき、ゲームミュージックとユーザーが用意したBGMとが置換可能になることによって、ゲームミュージックに対する「敬意」が失われる……というか、そのゲームのためにわざわざその楽曲を用意したという作り手側の意図が軽視されてしまうような場面が出てきやしないかと、私はそれが不安です。
応用が面白い部分もたくさんあると思うんですけどね。
>たちばなみおさん
いつもコメントありがとうございます。
そうなんです、またリッジなんです(苦笑)
リッジの曲はR4の辺りからゲームとは一歩距離を置いた音楽として独立した存在になってきていましたから、ジュークボックス機能を使うにはある意味持ってこいのゲームだったのかもしれません。
ゲームミュージックに対して批判があまりないというのは全くおっしゃるとおりで、それ故に「ユーザーを馬鹿にした打算」も充分成立すると思います。
この点はジュークボックス機能の有無によらず、現在のゲームミュージックが抱える大きな問題ではないでしょうか。
本文でも書きましたけど、お金かけて用意した音楽がどれだけ費用対効果を生んでいるのか、という感覚が欠如しているというのは、ある意味怖いことでもあります。
まあ、その辺をごまかすのに一番手っ取り早いのが「有名クリエイターの起用」なのでしょうけどね。
○○さんが曲書いたから音楽面は文句出ないよね、みたいな安心感(油断?)のようなものがメーカー側にはあるのかもしれません。
……っと、オフトピになってきましたね。失礼しました。